第7章

あの鍵のかかった引き出しのことが、丸二日間、頭から離れなかった。

三日目の朝、和也は私を心臓リハビリテーションユニットへ連れて行った。大きな窓からは陽光が差し込み、すべてが穏やかに感じられた。

ある声が、私の血を凍りつかせるまでは。

「梨乃! 君だなんて、信じられないよ!」

私は凍りつき、見知らぬその青年を呆然と見つめた。見覚えがあるような気はするけれど、私は記憶喪失のはずだった。

「すみません、どなたでしょうか?」私は努めて丁寧に尋ねたが、心の中ではパニックに陥っていた。『久雄だ! 私だって気づかれた!』

「僕だよ、山鹿久雄だ!」彼は興奮した様子で一歩近づいてきた。「...

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